絶滅寸前のカセットオーディオ。
2000年代の前半くらいまではまだ録再デッキもヘッドホンステレオも良い機械が出ていたのだが一旦消え始めるとあっという間に市場から姿を消して怪しい製品ばかりがはびこるようになってしまった。
というわけで今回はまだまだカセットオーディオ市場が元気だった20世紀の終盤に発売されたソニーのウォークマンWM-EX677を紹介しよう。

このWM-EX677はカセットテープを再生するための機械だ。録音は出来ない。
最近売っている安物のヘッドホンステレオとは性能・機能ともにレベルが違う。
メタルテープ再生可能、オートテープセレクター、オートリバース、ブランクスキップ機能、ドルビーB搭載などこんな小さなボディによくここまで詰め込んだと感心する。
ブランクスキップは便利な機能だった。テープの無音部分が長く続くと自動的に早送りして音のある部分を検知すると再生を再開する。この機能がないとバスや電車の中でがちゃがちゃ操作しなければならなくなる。つり革に掴まってるだけで大変なのにそんなことしてられん。

小さなボディを実現するため一つのボタンに複数の機能を持たせていたので操作は複雑だった。

説明書なしでは誰も操作方法を理解できないだろう。

平べったい特殊な充電池を使う。

フル充電で12時間再生可能。朝夕使っても一週間くらいは充電なしでいけた。

おそろしく精密な機械だ。

ものづくりニッポンを象徴するすごい製品だ。

これはもう完全に日本のお家芸だ。
当時欧米の一流メーカーでさえヘッドホンステレオを開発できなかった。
中国の新興メーカーなんぞには絶対真似できないだろう。
最近は中国のメーカーからヘッドホンステレオもどきの激安製品が出ているが残念ながら購買意欲の沸かない物ばかりだ。

カセットも最近の製品は安っぽいものばかり。まあ実際安いのだが。
昔のカセットは高かった。TDKのAD-46。

同社のカセットでは下から2番めの価格のカセットテープだが46分で450円もした。
76分のCD-Rが一枚あたり30円以下で買える現代では考えられない価格だ。

TDKのHD。46分で750円もした。

ハイポジションなのにメタルテープと同じ価格だった。

これは90年代に入ってから買ったマクセルの超高級メタルテープ metal vertex。

僕が過去に買ったテープの中で一番高い。90分で3000円以上したと思う。
たかがカセットのくせに一本一本異なるシリアルナンバーが刻まれていた。

90年代になって多くの人がFM放送のエアチェックに対する興味を失った。その代わりにレンタルCD屋から借りたCDを綺麗に録音して残すという趣味が流行った。その頃はDATやミニディスクという新たな録音機も出たがカセットデッキに取って代わることはなかった。
やがてワープロやパソコンの普及で綺麗にタイトルや曲目を印刷できるようになった。

普通の紙に印刷してカセットケースに入るようにカッターナイフで適切な大きさに切り取るのだ。
この作業が予想以上に楽しくて音楽を聴くよりこっちがメインの趣味のような気がすることもあった。
80年代はFM雑誌の付録のカセットレーベルを使っていたが90年代は不要になった。ワープロを使う場合あの手のレーベルに綺麗に印字するのは困難だったのだ。FM雑誌もあまり買わなくなった。